こんにちは。ときおです。
東京から岡山に移住して、ぶどう農家になりました。
気候や災害で収入が左右されそうだけど、農業だけで生活できているの?
ぶどう栽培だけで、不安なことはないの?ホンネが聞きたい。
ぶどう農家のみならず、これから農業を始めたいと思う方は心配に思っているはずです。農業だけで生活していけるのか、を。よくニュースで台風だの大雨だの、そしてハウスが飛ばされただのニュースを見ますよね。
そうなった場合に生活していけるのか、は重要なポイントです。
そこで今回は、
- 農業1本で生活していけるの?
- 農業だけやっていて不安なことはない?
- お金事情について、何か言うことある?
について、ホンネを語っていきたいと思います。
農業だけで生活していけるのか
まず、結論になってしまいますが、農業だけで生活していけます。
質素な生活とかではなく、普通にやっていけます。ただし、ずっとこのまま生活し続けれるのかという点にはいろいろな思いがありますので、その事を今回の記事では書いていきたいと思います。
私もぶどう農家で生活していけてる
まず、生活していけるといった根拠ですが、それは私が生活していけているということです。まぎれもなく、それが証拠です。私は親の基盤などなくゼロから農家になりましたが、今生活していけています。
妻も一緒に農業をやっているので、「妻が別の仕事をしている」などではなく純粋に農業(ぶどう栽培)の儲けだけで生活していってます。
もちろん、それには条件があります。
単価×栽培面積で、適切な収入を
それは、栽培面積です。少しの面積(10aなど)でぶどうを栽培しているだけでは、おそらく生活していけません(極端に節約生活をすれば大丈夫です。一般的にはやっていけないだろう、という話です)。
そのため、ぶどうの単価×栽培面積(生産量)が自分の世帯の生活費を超えることができれば、問題なく生活していけます。もちろん、ぶどう以外の品目についても同じことが言えます。
ぜひ一度計算してみてください。
ちなみに、この単価というものは地域によって異なってきますので、自分の興味のある産地を調べてみましょう。県や国の農林水産関連ページに載っている場合が多いです。
※上記の情報は平均的な値で、もちろん売り方などを工夫し高単価な販売戦略が取れれば少ない価格でOKです。
万が一、災害や病害虫などで作物が実らず、収穫できなかったらどうでしょうか。もちろん収入はゼロです。出荷するものがなければ収入はありません。そこは個人事業主である農家のつらいところです。
ただし、それを助けてくれる仕組みはあります。
農業専用の保険がある(収入保険・施設保険など)
それは、みなさんもよくご存じの保険です。その農業版があります。保険の必要性は個人によって様々だと思いますが、一読しておく価値はあると思います。
収入保険
まず一つ目が収入保険です。NOSAI(全国農業共済)が提供しているものです。
農業者ごとに、保険期間の収入が基準収入の9割(補償限度)を下回った場合に、下回った額の9割(支払率)を補てんします。
収入保険|全国農業共済組合連合会(NOSAI全国連)
上記の通り、収入が例年の収入の9割に満たなかった際に、下回った額の9割を補てんしてくれます。これは災害や病害虫、自身のけがや盗難など幅広い保証があり、かなり良いものだと個人的には思います。
以下リンクをつけておきますので、参考までに見てみてください。
園芸施設保険
こちらもNOSAI(全国農業共済)が提供しているものです。
園芸施設が損害を受けた場合に補償します。ガラス室をはじめとする特定園芸施設(ハウス本体・被覆材)と選択加入(オプション)の附帯施設、施設内農作物、撤去費用、復旧費用となります。
園芸施設共済 -農業共済事業-
上記した収入保険とは違い、ハウスなどの施設を対象としたものです。近年は大雨や台風が強力になったりしているので、施設が破壊される確率も高いと考えます。
そのため、この保険は入っておくとGOODだと思います。
こちらも以下にリンクをつけておきます。参考に見てみてください。
私の思う保険加入について
ちなみに、私個人の感想ですが、就農~5年くらいであれば、まずは収入保険に入っておけばよいと思います。まずは収入を安定させるという意味で安心かなと思います。
個人の生命保険や医療保険、それに加えて収入保険や施設保険となると、保険貧乏になっちゃいますもんね。
地域の支えもある
これは田舎あるあるのような話です。
もしその年の作物の出来が悪くても、田舎であればご近所さんが支えてくれます。それはどういうことか。
野菜をけっこう貰えます。笑
これは正直非常に助かります。私も周りの方に野菜をけっこう頂きます。ナスにキュウリ、ピーマンやタマネギなどなど。ぶどう農家といっても、自宅用の野菜を自給自足している人がほとんどです。
ちなみに、これは日々のお付き合いの賜物かと思います。なので、近所の人へ挨拶はもちろん、草刈や行事などへも積極参加しましょう。
ちなみに野菜などをもらいたいがための近所付き合いはもちろんNGですけどね。
それでも農家の私が抱える不安
ここまでは「農業で生活していけますよ!」という前向きな話を書きましたが、ここからはホンネの部分です。
やはり農業1本で、というのは若干不安です。その理由を紹介します。
農業につきまとう数多くの不安要素
やはり農家は個人事業主。会社員のように毎月の給与が保証されているものではありません。上記で書きましたが、収穫がゼロなら収入もゼロ。保険に入っているとはいえ、大規模な災害など発生すれば長期的に収入がなくなってしまうかもしれません。
不安を掻き立てるものではありませんが、以下不安だと思う要素を書いていきます。
先の見えない異常気象
まず何といっても近年の異常気象(特に猛暑)。めちゃくちゃ暑いですよね。今の猛暑が普通になり、この先ずっと熱くなってしまいそうです。
となると、特にぶどうを含む果樹。果樹の木は、冬は休眠しています。その休眠期間が短くなったり、そもそも休眠できないような異常気象になることも考えられます。
こんな暑さは果物・野菜などの農作物は経験したことがないと思うので、今後ずっと品質の良いものが収穫でき続けるのかは不安です。
毎年のように起こる大規模災害
次に、毎年のように起こる大規模災害。とくに大雨や地震、土砂災害です。
よくニュースで災害現場の中継がされていますが、ハウスが流されたり骨組みだけになっただけのハウスなど、悲惨な姿を目の当たりにします。あれは非常につらい光景です。
壊れたハウスがあるということは、その管理者の農家さんがいる。その中には収穫前の収穫物があったとすると、すべて廃棄になる。そう考えると非常につらいです。
このように、大規模災害が発生すると一気に自分の職場(畑)が失われます。それがいつ自分の地域で発生するか、わかりません。もしかすると来年かもしれません。
病害虫や、その他の不安要素
2023年ごろに”シャインマスカットの未開化症が各地で発生”というニュースがあり、ぶどう農家を震撼させました(少なくとも私は)。現在では調査が進み、発生した原因も解明されつつあります。幸いなことに暑さなどの環境要因ではなさそうですが、今後の異常気象によっては同じような事象が発生することも考えられます。
▼TBS NEWS DIG より 未開化症に関する記事
また、その他の不安要素としては自身のケガもあります。大型機械を使わずとも農業は危険がつきものです。ハサミで指を切るのはかわいいもので、高所からの転倒で何か月以上も長期入院なんてことも。
その他、ぶどうの市場価値が下がってしまい、全く売れなくなることも考えられます。それはシャインマスカットなどの苗が海外に流出し、韓国や中国、その他地域で生産されるようになると国内産は買われないようになるかもしれません。
▼東洋経済オンライン より シャインマスカット流出に関する記事
どうしようもならないときは必ずやってくるという危機感を持つ
これまで見てきた多くの事柄は不安要素であり、発生する可能性は低いです。ただ、発生する可能性もある、というのは間違いありません。
そのため、私含めて農家の皆さんは必ず「農作物を作っていけなくなる、どうしようもない状態になるという危機感」を持ち続けることも大切ではないかと考えています。
農業プラス”副業”が良いと思うワケ
ここまで見てきたように、農業で問題なく生活していけますが、やはり不安要素も大きい。
そのため、これからの農家は農業プラス”副業”が良いと考えています。この章では、その理由を説明します。
収入元が2本柱になるだけで、懐事情と心にゆとりができる
まず第一に、副業が軌道に乗れば農業と合わせて収入が安定するということです。これが一番重要だと思います。
上の章で書いた通り、農業の収入は安定しない面もあり「今年はうまく作物が育つかな、収穫できるかな」という不安があります。私も常に持っています。
そのため副業の収入もあれば、収入の心配も少なくなるので、心にも余裕ができます。そうすれば、自然と農業にも力が自然と入ってくるのではと思います。
個人的に、この心に余裕ができるというのが非常に大きいです。ぶどう栽培だけの時は、その年の収穫量や品質、市場価格が気になって気になって心に余裕がなかったです。
では、どんな副業があるのか、今後別記事でまとめてみたいと思います。
ぶどう農家であれば、オフシーズンでも十分活動できる
ぶどう農家であれば、必ずオフシーズンはあります。このオフシーズンは比較的時間が自由なので副業も十分できます。実際、私もできています。
その他の農作物でも、必ずオン/オフシーズンはあります。なので、そのオフシーズンを有効活用して活動していってみましょう。
ちなみに夏の忙しい時期であっても、基本的には個人事業主の農家は時間を自由に使えるので、副業での商談なども柔軟にできますよ。
前職のスキルを活かせるチャンスがある
前職のスキルがある人であれば、それを活かさない手はないかと思います。
私はITの世界にいたので、副業としてITの仕事にチャレンジしています。そのほか、建設業関連の仕事をやっていた友人は、果物ハウスなどの組み立て作業をやっています。意外にぶどう栽培のいい話が聞けるみたいです。
看護師の資格を持っている友人は、資格を活かした短期のバイト(団体旅行の帯同や、採血場などの支援など)で高収入なものがあるみたいです。
ぜひ前職のスキルを活かしたチャレンジをしてみましょう。
もし自分は違うなー、と思っても待ってください。その経験をブログで発信してみてはいかがでしょうか。一般的もしくは資格など特にない職業だとしても、店員・職員側から見た視点は全然違います。
ぶどうの話になりますが、毎年ぶどうの時期になると「シャインマスカットで甘くておいしいのは緑色か黄色か」という記事が出てきます。これはぶどう農家では当たり前な話で発信するような話題でもなかったですが、一般消費者からすると気になる点なのだと感じています。そういう、店員・職員側からすると当たり前な話を発信してみると、意外に流行る(バズる)かもしれません。
前職を活かせるようなことないなー、と思っている方でも、ぜひブログやSNSでの発信にチャレンジしてみましょう。
地域の人が応援してくれる
これは田舎あるあるだと思います。
私は副業でインターネット関連の仕事をしていますが、妻はハンドメイド作家として作品を制作・販売しています。その妻の商品を地域の人がけっこう応援し購入してくれています。
購入してくれるのはもちろんですが、販売スペースまで無償で提供してくれており、かなりありがたい存在のようです。
そうなんです。かなり応援しておくれていて、口コミ効果もバツグン。売り上げの大半を地域のコミュニティが占めています。
まとめ
◆本記事のまとめ
いかがだったでしょうか?
この記事を書くにあたり、これから就農に向け準備している方にとっては少し暗い話だったかもしれません。
ただ、就農した後に聞くよりは就農する前に認識しておいて、就農の準備と合わせて副業のタネも撒いておくことは無駄にはならないと思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。
もちろん、あなたの産地や先輩農家などからすると、ぶどう1本の収入で十分大丈夫だという方もいると思いますが、個人事業主である以上、収入の責任はすべて自分になるので、どういう収入を確保するのかは自分で選択して行動していければと思います。
また、先輩農家は過去の成功体験からであり、異常気象や海外への流出は最近の話です。これから新規に就農する人や、就農したての人は状況が異なりますので、そこも踏まえて自己判断で行きましょう。
大事なのは農業も副業も楽しむ気持ち!!一緒にチャレンジしていきましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
「さあ移住!さあ農業!」
▼私がなぜ移住をしてぶどう農家になったのか、以下の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
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