こんにちは。ときおです。
東京から岡山に移住して、ぶどう農家になりました。
これから就農を考えているけど出荷先ってどう決めるの?
とりあえずJAに出荷しておけば間違いないんじゃない?
ぶどう農家のみならず、これから農業を始めたいと思う方は気になっていると思います。そうです、出荷先です。農家にとって出荷先の選択は非常に重要です。収入に直結しますからね。
そこで今回は、
- 出荷先はどうやって決めるの?JAだけじゃないの?
- 出荷する上で、何か重要なことはある?
- JA以外の出荷先のメリット/デメリットを知りたい!
について、ホンネを語っていきたいと思います。
出荷先の重要性について
自分で丹精込めて作った農産物を、どこに出荷するかは非常に重要ですよね。私も初出荷の時には悩みました。
おそらく就農したてで初出荷を控えている方も悩むはず。ぜひこの記事を参考にご自身の出荷先を考えてみてください。
※この記事は私(ぶどう農家)が栽培して出荷している経験を元に語った内容です。そのため、野菜や農業法人などは少し考え方が違う場合もありますが、そこはご理解ください。
農家は個人事業主ということを忘れずに
まず、出荷先の重要性についてです。
農家の私たちは基本的に個人事業主です。個人(家族)で事業を営み、個人の責任で収入をあげていかなくてはなりません。会社員のように誰かに従っていれば収入を保証されているものではありません。
そして、出荷先をどこにするのかは、自身の収入に直結します。
なので、私たち農家にとっては一番重要な決定事項です。出荷先を決めるには、各出荷先の選択肢を把握・理解して決めるようにしましょう。
時々周りの人たちが「〇〇市場に出してよー」「〇〇直売所がぶどう欲しい(置いてほしい)って言ってたなー」と言ってきます。私もけっこう言われます。
それらは、〇〇市場や〇〇直売所の都合であって、自分にとって利益があるのかしっかりと吟味する必要があります。要は周りの人から言われたといって安易に出荷先を選択しないようにしよう、ということが言いたいです。
産地・地域によって特徴がある場合も
産地・地域によっては全量JA出荷する等、全体方針が決まっているところはあります。それはそれで産地全体の一体感があるので良い部分もあります。おそらく市場価値が高くJA出荷が強いので、全量JA出荷で十分に儲けていけるのだと思います。
そのため、もし皆さんが就農先を探している途中の人は、その産地や地域がどういう出荷方針でやっているのか、事前に確認をしておくのがGOODだと思います。案内をしてくれる役所の担当の人や、JA職員の方に聞いてみると良いでしょう。
出荷先4選とメリット/デメリット
ぶどう農家の私が考える、出荷先4選とメリット/デメリットをまとめました。ぜひ出荷先を選ぶ際の基準にしてください。
下記、各出荷先について詳細を記載します。
各出荷先のメリット/デメリットを十分理解したうえで、出荷先を決めましょう!
JA(農業協同組合)
まずはJA(農協協同組合)です。産地・地域の農家全体でまとめて市場に出荷する方式です。
ちなみにJA出荷を行うためには、産地の出荷組合やぶどう部会に入る必要があります。詳しくは産地を管轄しているJA支店に聞いてみてください。
私が思う1番のメリット
出荷規格にさえ沿っていれば全量引き受け・出荷が可能です。なので売れ残り(引き受けてくれない)というものがありません。直売所や個人販売では、当然売れ残りが出てきます。平日であれば、時期にもよりますが売れ残りが多くなります。そのため、この全量出荷というのは魅力的です。
ぶどうは収穫適期が短い(約2~4週間)ので、一気に大量出荷できるのはありがたいです。
その他のメリット
直売所などは、オープン前までに出荷しておく必要がありますが、JA出荷であれば翌日の選果時間までに準備しておけば大丈夫です。そのため、気持ちの面でも余裕があります。なお、産地によって選果時間が違うので確認してみてください。
デメリット
一番のデメリットは、価格を自分で決められないことです。基本的には市場出荷になるので需要と供給で価格が上下します。なので、自分では出来が良かったと思っても価格が思っていた以上に悪いということも多々あります。
また、JA出荷だと「輸送量」「JA手数料」「市場手数料」など、販売価格の約15%~20%(地域差あり)が経費として差し引かれます。私の感覚としては、直売所出荷やネット販売のサービス利用料より高い感覚です。
JAには出荷規格があります。ということは規格に乗らないものは廃棄になるということです。例えば個人販売では、ぶどう一粒でも販売可能なのですが、JAにはそういう規格がないので廃棄になってしまうのです。少しもったいないですよね。
農産物直売所(委託販売)
各地域に増えてきた農産物直売所。道の駅などにも併設され人気が高まってきたように思います。ちなみに、直売所が近場にない場合は交通費・時間などを考慮して出荷を考えましょう。
私が思う1番のメリット
なんといっても集客力だと思います。地元の人や観光客が多く来店し週末は行列になることも。個人の直売で人を集めるのは至難の業ですからね。
その他のメリット
価格が自由に設定できることはメリットです。良いものは高く、珍しい品種の希少価値があるものも高く、自分の頑張り次第で収入が増えていきます。
また、出品物に対してお客さんの反応がわかります(直売所の店員さんを通して)。「美味しかったよ!」などのお褒めの声はパワーにもなりますし、「こういう風にしてくれるともっと良い!」みたいな自分では気づかない売り方が見つかることもあります。消費者の声は貴重ですよ。
出荷方法についても無限大です。必ずしも房じゃなくても良い、ということです。
例えば「ぶどうの宝石箱」として、いろんな品種のぶどうが1粒1粒入っているものがあります。これは消費者側からするといろいろ種類があり嬉しい商品です。農家側も、例えば房型が悪く売り物にならないものでも分解すれば1粒1粒に商品価値がでるので、廃棄の量か減ります。
上記は、房型の悪いぶどうを分解し各品種を組み合わせてパックにしたものです。これも結構人気です。JA出荷ではこういう形態はないですからね。
デメリット
まずは、競合が多いことです。特に集客力のある人気の直売所ではなおさらです。
小言になりますが、直売所での競合で一番やっかいなのは、儲けを重要視していない出荷者です。儲けを重要視していない出荷者は非常に安い価格で出荷しますので、適正価格で出している側が相対的に高くなり売れにくくなります。
また、直売所の営業日や営業時間に販売機会が左右されます。急な休業や閉店時間の繰り上げなどはリスクですよね。
販売委託料ですが、毎年の出荷料と概ね売上の10%~15%が経費として必要です。個人販売に比べると高くつきますよね。実際の手数料については、各直売所に直接聞いてみましょう。
個人販売(直販)
個人販売には販売所などでの直販と、WEBショップを開設してネット販売する方法があります。この章では、直販を紹介します。
私が思う1番のメリット
一番のメリットは、何といっても販売の経費(販売手数料など)がないことです。そのため販売した売上が、そのまま利益になります。
その他のメリット
直売所と同じで、価格が自由に設定できることもメリットです。また、消費者の声が直に聴けるのも大きなメリット。直売所だと店員さんを経由しますが、個人販売だと直接会話できるというのは良いです。
他に、直売所などに比べても販売方法は無限大です。例えば“収穫体験付きの量り売り”など、観光農園のようなことをしてもGOODですよね。“1本分の房すべて売り”なんてのも面白そうです。これは直売所にはできない売り方です。ただし、売買の種類を増やせば増やすほどそこに割く人員は必要になりますので、ご注意ください。
デメリット
まずは、集客範囲が限定的だということです。当面は知り合いからはじめ、口コミで広げていくのではと思います。SNSなどで情報発信しても良いと思いますが、これもなかなか苦労があります。
また個人販売で店頭売りなどすると、やはり在庫が残ります。集客次第ですが、気になるところですよね。併せて接客・レジ担当が必ず必要になりますので、来客の少ない時間帯や平日などは人員配置に工夫が必要かもしれませんね。
個人販売(ネット販売)
最後に、個人でWEBショップを開設してネット販売する方法を紹介します。
私が思う1番のメリット
何といっても1番は販売地域が全国だということです。知名度の高いぶどう農園は当然ネット販売を行っており、全国の顧客を抱えています。
その他のメリット
ネット販売だと無駄な在庫が残らないというメリットがあります。ネット通販は基本的に決済後の商品発送になります。注文後の収穫・梱包・発送になるので無駄な在庫は必要ありません。ネットショップで売ろうと思っていた数が残ったとしても、別の出荷先に回せます。
また、ネットショップ開設については【ゼロから自作する】【ショップサービスを利用する】があります。
個人的には、【ショップサービスを利用する】がベストだと思います。最近のサービスは利用料が安いものが多いです。
【ゼロから自作する】はサーバ・クラウドなどを調達し自分でECサービスソフトを導入し、顧客や支払いのDBを整備する必要があります。これは非常に手間です。まあ、出来なくはないですよ。
ちなみに、私の農園のオンラインショップはBASEを使っています。
このネットショップ開設関連については、別記事でまとめたいと思います。
デメリット
何といっても宣伝が大変です。全国の消費者に自身のネットショップを知ってもらおうとすると、相当な労力と時間がかかります。SNSを駆使して、とよく言いますが相当な労力が必要です。
また、1件1件配送伝票を作って発送対応しないといけないので、こちらも手間です。発送数を多くしようとすると配送先間違いや配送物の間違いが発生しがちになるので、注意が必要です。
ショップ開設について、IT知識があればおそらく問題ありません。ただ、IT知識が全くなければ少し難しいかもしれないというのが難点ですね。
ハイブリッド出荷をおすすめします
さて、ここまで出荷先の選択肢について見てきましたが、私の出荷方法を少し紹介します。
私は「ハイブリッド出荷」を行っています!
※ハイブリッドとは、一般的には異なる技術や機能が組み合わされたものを指す言葉です。それを出荷行為に合わせて私が勝手に作った造語です。
「ハイブリッド出荷」とは、単純に出荷バランスを考えるだけでなく、各出荷先が抱えるメリデメやリスクなどを考慮して出荷先を複数(私のおすすめは3つ以上)にすることです。
なぜハイブリッド出荷をおすすめするのか、それは1つや2つの出荷先に絞ると、その出荷先が無くなったとき(倒産など)や販売に際し不利な状況(販売時間の短縮、売り場の縮小など)があった際に、我々農家側も非常に大きな経営打撃を受けるためです。
私の周辺にある直売所も、17時までの営業だったのが14時までに変わったことがありました。3時間の営業時間の縮小は、出荷者である農家側も販売機会が奪われて影響が大きいです。
そういう状況を避けるためには、就農1年目だろうが出荷先をしっかりと調査し複数の出荷先を持っておくべきだと私は考えます。
ちなみに私は、JAと直売所と個人販売の直販・ネット販売の4出荷先でハイブリッド出荷をしています。
最後に。出荷する上で重要なこと
出荷先をどこにするにしても、個人事業主として農家として必ず守ったほうが良いことがあります。非常に重要なことです。
絶対に「安売りしないこと」です。友人・知人はもちろん親族に対してもです。
例えば個人販売のときにお客さんから「ちょっと高いなー」と言われたからといって安易に安くしないようにしましょう。また、販売が不振だったとしても、すぐに安売り戦略はNG。売り方を変えたり等、販売戦略を変える等で改善することも多いです。
私の経験上、単純に値段を下げただけで売れ行きが良くなるかといえば、そうでもないです。
また、値切ってくる人や、「周りに比べて高いなー」と言ってくる人がいれば、そんなお客さんは断りましょう。「おいしいぶどうを売ってあげますよ」ぐらいの気持ちで商売をすれば良いです。自分の作ったものに自信を持ちましょう。
※どこにも出荷できないようなボロ房は、知り合いに安く譲る時もあります。※JA出荷は農家側で値段を決められないので、この話は対象外です。
まとめ
◆本記事のまとめ
いかがだったでしょうか?
農業をやる上において、売上・収入は最重要事項です。そのため出荷先も重要。しっかりと吟味して決めましょう。私も就農したての頃は、とにかく収穫・出荷を行うのが精いっぱいで出荷先を吟味していませんでした。
その後、栽培も安定的にできるようになり出荷先を見直したところ売上・収入も上向きになりました。
ぜひ皆さんは就農したてのころから、しっかりと出荷先を見極めて判断し、儲ける農業を行いましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
「さあ移住!さあ農業!」
▼私がなぜ移住をしてぶどう農家になったのか、以下の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
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