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ときお
移住者・ぶどう農家
移住者。ぶどう農家。男性。
IT会社員から農家に転身。その経験をホンネで語ります。

◆実績・資格など
・IT資格(情報処理、DB)
・FP、農業簿記

◆経歴など
・1986年生まれ
・国立大学にて物理を専攻
・大手IT企業で10年勤務
・EC関連のビジネス展開に従事
・2020年岡山に移住し、ぶどう農家へ転身

ぶどう栽培の種類。【ハウス】【無加温】【露地】栽培について語る。

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栽培について語る

こんにちは。ときおです。
東京から岡山に移住して、ぶどう農家になりました。

新規就農者

ときおさん(筆者)は露地栽培をしているっていうけど、その他の栽培方法はあるの?

訪問者

ぶどう栽培といったらハウス栽培のイメージしかないね

ぶどう農家や栽培に興味がある方で、まだ具体的に栽培イメージができていない方は気になっていませんか?栽培環境の違いは、イニシャルコスト(初期費用)やランニングコスト(維持・運転費用)、出荷時期など全然違います。

そこで今回は、

  • ぶどう栽培環境の種類って、一般的にどんなものがあるの?
  • それぞれのメリット/デメリットは?
  • どういう栽培方法を選択するのが良い?

について、ホンネを語っていきたいと思います。

目次

ぶどう栽培環境の種類

ぶどう栽培環境の種類ですが、以下3種類あります。

  • ハウス栽培
  • ハウス無加温栽培
  • 露地栽培

※なお、本記事では文字省略のためハウス無加温栽培を”無加温栽培”と表記します。
※産地・地域によっては上記の呼び名とは異なる、あるいはこれ以外にも栽培環境がある場合があります。一般的な3種類としてご覧ください。

ハウス栽培

ハウス栽培とは、ビニールハウスやガラスハウスなどのハウス施設を建てて、加温機を使って加温栽培をする方法です。なお、ぶどう栽培では現在はビニールハウスが一般的です。

加温機というのは、重油やガスを利用しハウス内を温める大型の暖房器になります。

ハウス栽培イメージ
ハウス外観
ハウス内部イメージ
ハウス内観

無加温栽培

無加温栽培とは、ビニールハウスやガラスハウスなどのハウス施設を建てて、加温機を使用せずに栽培をする方法です。加温機がない代わりに、ハウスを閉め切ることで内部を温めることが可能です。

施設ですが、ハウス栽培環境と同じ(ハウス)です。

露地栽培

露地栽培とは、ぶどう棚を設置し雨除けのビニール被覆を行い栽培する方法です。

ぶどう棚
露地栽培の畑

それぞれの特徴やメリット/デメリットについて、次の章から詳しく説明します。

それぞれの栽培環境による特徴

まずは、それぞれの栽培環境による特徴を説明します。

一番の特徴は温度

それぞれの種類による一番の特徴の違いは「温度」です。温度を変えるためにハウスなどの施設を建てています。

ではなぜ温度の違いが大切なのでしょうか?

温度計

そもそも、ぶどうは積算温度で成長・発芽していきます。ということは、早く収穫・出荷するためには冬から温度を上げることが必要になります。ぶどうに限らず、多くの植物は積算温度で成長します。

ぶどうの収穫・出荷の時期が早まるということは、需要と供給の関係でぶどうの市場単価が高くなります

そうです、栽培温度をあげることにより売上が増えるということです。農家で一番大切なことは売上ですよね。なので、温度が一番重要であり、大切なことになります。

施設構造の特徴

次に構造の特徴です。ご存じの方は読み飛ばしてください。

まずはハウス(ハウス・無加温とも同じ)の構造についてです。

上の章での写真の通り、鉄骨や鉄筋パルプを組み立て外側にビニールを張る構造です。内部には加温機のほか、潅水設備(水をあげる設備)のほか温度測定器や空調設備など、様々な機械や測定器を取り付けています。

次に露地栽培の特徴です。

ハウスとは異なり、露地栽培では簡易ビニールの屋根のみで、木に近い箇所のみ(ぶどうの房が育つところ)雨から守っている構造です。潅水設備がない畑も多くあります。

両者の大きな違いは、雨や温度など自然環境をコントロールできるかどうかです。

それぞれの栽培環境のメリット・デメリット

では、栽培環境・構造が違うことによって、どんなメリット・デメリットがあるのか詳しく解説します。

ちなみに先に言っておきますが、露地栽培にデメリットが多いように書いています。ただし、水の管理や農薬を適宜使うことで高品質のぶどうを作ることも可能です。露地栽培がダメなわけではないので、そこは勘違いしないようお願いします。

※記事中に出てくる金額は、あくまでも参考値です。

ハウス栽培

ハウス栽培イメージ

まずはハウス栽培です。

メリット

  • 出荷時期を調整できる(早めに出荷できる)
  • 天候の影響を受けにくい
  • 農薬を減らすことができる
  • 害獣をある程度防ぐことができる
  • 雑草の発生を抑えることが可能
  • スマート農業をやりやすい

出荷時期を調整できる(早めに出荷できる)

まずは一番の特徴であり、一番のメリットです。出荷時期の調整により売上を大きく伸ばせることです。農家としてやっていく以上は、売上が大きいのが一番ですよね。

天候の影響を受けにくい

ハウス設備のため雨風から守ることができます。例えば「雨が降らない」「雨が降りすぎる」など水の管理で困ることはありません(潅水設備があることが前提)。また強風による影響も抑えることができます。

ぶどうを育てて初めて分かったのですが、水のやりすぎ/やらなさすぎは品質に大きく影響しますので、水の管理ができるというのは大きいですよ。

農薬を減らすことができる

ぶどうは雨に弱い植物です。葉や花、房に雨を媒介して病気が蔓延しやすいからです。ハウス内では木の根元に潅水することで病気の蔓延を抑えることができるので、その分農薬の回数・量を減らすことが可能です。

害獣をある程度防ぐことができる

ハウス設備で守られているので、害獣被害から守ることができます。ただ、近年はハウスのビニールを破って内部に入られたという声が私の地域からも聞こえてくるので、100%ではありません。ただし、露地栽培よりは守られます。

雑草の発生を抑えることが可能

草

雑草は昆虫や鳥、風によってタネが運ばれ広がりますよね。ハウスではそういう侵入が少ないため、雑草が生えにくいです。なので、雑草除去の手間や雑草からくる病害虫を少なくすることができます。

スマート農業をやりやすい

最近の流行りのスマート農業。温度管理やらハウスの開閉やら水散布やらをインターネット経由でスマートフォンで実施する、アレです。これはハウスでやりやすいです。というかハウスでないとできないかもしれませんね。

以上、ざっと書いただけですが多くのメリットがハウス栽培にはあります。逆にデメリットがあるのか、以下で解説します。

デメリット

  • イニシャルコスト(初期費用)が結構かかる
  • ランニングコスト(燃料代、ビニール張替、電気系統、加温機メンテナンス)が結構かかる
  • 潅水やハウス開閉を忘れた場合に、木へのダメージが大きい

ハウス栽培の一番のデメリットは、何といってもコストです。コストといってもイニシャルコストとランニングコストの両方です。

イニシャルコスト(初期費用)が結構かかる

昨今の物価高、人件費高騰によりハウス建設は昔に比べて非常に高額になってきています。地域差や業者、あとは部材の価格(時期により異なる)にもより値段ははっきりとはわかりませんが、10aのハウスで約800~1,500万円程度かかると思います。

業者と相談し、自分でできる部分(ビニール張りなど)は積極的に自分でやるようにしたいですね。あとは加温機など中古品があれば譲り受ける等、できるだけイニシャルコストを抑えるようにしたいです。

ランニングコスト(燃料代、ビニール張替、電気系統、加温機メンテナンス)が結構かかる

イニシャルコストではハウスを建設や加温機についての費用でしたが、ランニングコストもかかります。

一番大きいのは、加温するための燃料費。重油でもガスでも、最近はエネルギー代が高騰しているため、その影響を受けやすいです。冬や春の加温をしっかりする時期は、月に数十万(後半のほう)くらいかかると見込んでおくべきです。

ビニールが汚れた場合の定期的な張替えや、電気系統が故障した際の修理、加温機のメンテナンスなど、いろいろな箇所でコストがかかってきます。

これらコストを回収するためには、良い品質のぶどうを高値で販売したいものですね。

潅水やハウス開閉を忘れた場合に、木へのダメージが大きい

水やり

これはおまけみたいな情報です。水やりやハウスの開閉を手動でやっている場合の話です。

もし長期間潅水を忘れていたら(木がカラカラ状態になる)、もし真夏の暑い日にハウスを開けるのを忘れていたら(ハウス内が高温になりすぎる)。

そうです、おそらく木が枯れると思います。露地栽培では雨など自然の水やりがありますが、ハウスは完全に人間管理なので何か忘れていたときに木へのダメージが大きいです。

無加温栽培

次に無加温栽培です。無加温栽培はハウスを用いて行いますので、ハウス栽培と似ています。なので、ハウス栽培とは異なる点をピックアップし解説していきます。

メリット

  • 出荷時期を調整できる(ある程度早めに出荷できる)
  • 天候の影響を受けにくい
  • 農薬を減らすことができる
  • 害獣をある程度防ぐことができる
  • 雑草の発生を抑えることが可能

ハウス栽培と異なる点は、以下です。

出荷時期を調整できる(ある程度早めに出荷できる)

ハウスとは違い加温して高い温度帯にもっていくことができないので、出荷時期をある程度しか早めることしかできません。ですが、露地栽培より出荷時期が若干早いのは事実ですので、売上も大きくなります。

ただ、現在は猛暑の影響で、露地栽培のぶどうも早くに収穫できる傾向にあるので、もしかすると無加温栽培をしている恩恵は、出荷時期という点ではあまりないかもしれません。

デメリット

  • イニシャルコスト(初期費用)が結構かかる
  • ランニングコスト(ビニール張替、電気系統)がある程度かかる
  • 潅水やハウス開閉を忘れた場合に、木へのダメージが大きい

ハウス栽培と異なる点は、以下です。

ランニングコスト(ビニール張替、電気系統)がある程度かかる

ハウス栽培に比べ燃料代などかかりません。ただし、ビニール張替や電気系統に問題があった場合などの費用はかかってきます。

露地栽培

ぶどう畑イメージ1

次に露地栽培です。ハウス栽培や無加温栽培に比べ施設は簡易的で自然に近い状態での育成方法だと、どんなメリット/デメリットがあるのでしょうか。解説します。

メリット

  • コスト(イニシャル、ランニング)が少ない
  • 水やりを忘れた場合でも、ある程度自然の雨で大丈夫

コスト(イニシャル、ランニング)が少ない

まず一番はコストが少ないことです。ぶどう棚設置もハウスに比べて低額ですし、ランニングコストも簡易ビニールのみですので、あまり費用はかかりません。

ただ、コストが少ないといっても昨今の材料費・人件費高騰でぶどう棚は10aあたり約150~300万円程度はすると思います。もちろん地域差や業者にもよりますが、そのくらいだと思っておいてください。

支柱や針金の設置など、自分でできるところは自分でやると費用も抑えられるので、業者と相談しながらやるのがおすすめです。

水やりを忘れた場合でも、ある程度自然の雨で大丈夫

ハウスとは違い自然の影響を受けやすいです。そのメリットとしては水やりになります。定期的に雨が降ってくれれば、潅水の手間が省けるので楽ですね。

潅水を長期間忘れていても、雨が降っていれば大丈夫です。

デメリット

  • 天候の影響を受けやすい(過剰な水分、水不足、風害など)
  • 病害虫が発生しやすい
  • 害獣に侵入されやすい
  • 雑草の管理の手間がある

天候の影響を受けやすい(過剰な水分、水不足、風害など)

露地栽培で一番のデメリットです。雨が続くと過剰な水分供給となり房がダメになることがあります(裂果など)。潅水設備がない場合、逆の水不足も同じです。

強風が吹くと、房そのものが飛ばされてしまうことがあります。防風ネットなど設置するとある程度は防ぐことはできますが、やはり台風が直撃するときは非常に心配です。

病害虫が発生しやすい

病害虫は天候の影響と同じくらい一番のデメリットです。とにかくぶどうは病気に弱く、雨や曇天が続くと病気が蔓延してしまいます

また害虫も多く飛来し、適切に農薬をまかないとだめになってしまいます(最悪、枯れる)。耕作放棄地などの荒れ地が近くにあると虫の発生源になり、影響が大きくなる場合もあります。

害獣に侵入されやすい

イノシシ

イノシシ、サル、シカ、カラス、ハクビシン・・・。種類を上げるときりがありません。そのくらいぶどうは各種害獣に狙われています。電気柵や網などである程度防ぐことはできますが、完全に防ぐというのは無理な気がします。

まあ、それだけ美味しい作物を作っているということで前向きにとらえましょう。

雑草の管理の手間がある

自然環境に近いので、雑草は多く生えてきます。特に春から夏にかけての草刈や除草剤散布など管理は大変です。藁を敷くと雑草の抑制になるので、畑に敷いている人もいますよ。

ちなみに、草生栽培(雑草を敢えて生やす)という選択肢もありますが、病害虫が発生しやすい環境になるので私はおすすめできません。あくまでも個人的な意見です。

どの栽培方法が良い?

ここまで栽培環境を紹介してきましたが、各メリット/デメリットを踏まえて、どの栽培方法が良いのでしょうか。

どの栽培方法がいい、というのは無い

結論!どれが良いというのはありません!はっきり言えなくて、ごめんなさい。

というのもコスト面や運用面、メンテナンス面や病害虫の観点など、どれを選ぶかにより一長一短だからです。皆さんの考え方によりハウス栽培が一番ですし露地栽培も一番になります。

そのため、自分自身で何が最優先事項なのか吟味して決めましょう。

では、私はどう考えているのか。それが次の章です。

組合せ栽培が良い

私は組合せの栽培をおすすめします。例えば以下のような栽培です。

ハウス栽培10a、無加温栽培10a、露地栽培10a :合計30a

それはなぜか。作業の分散ができるからです。すべての栽培方法で作業タイミングの時期が異なります。そのため、花切りや粒間引き、ジベ処理などの重要な作業を分散することができるのです。

例えば、同じ面積30aでもすべて露地栽培だったとします。

露地栽培30a :合計30a

そうするとすべての面積で同じ作業になるので、どうしても遅れてしまう場合があります。そうすると花ぶるいや種抜けができないといった事象になってしまいます。

ぶどう(農作物)は作れば作るだけ売上も上がります。そのため組合せ栽培で作業分散をして売上を増やすような環境が重要だと私は考えます。

まとめ

本記事のまとめ

ぶどう栽培環境の種類って、一般的にどんなものがあるの?

ハウス、無加温、露地栽培が一般的です

それぞれのメリット/デメリットは?

それぞれの栽培環境のメリット・デメリット章を参照

具体的にどう始めるの?

ハウス、無加温、露地を組み合わせるのがベストです

いかがだったでしょうか?

ぶどう栽培と一言でいっても、いくつかの栽培環境があります。それぞれのメリット/デメリットを十分にいかして良いぶどうづくりが始められるといいですよね

ちなみに、組合せで保有するのがベストと書きましたが、就農当初からすべての環境を準備する必要はありません。出費が大変です。栽培環境の理想はもちながらも、まずは露地栽培から始められるといいですよね。

ときお

まずは露地栽培から始めて、ハウス・無加温を始められると理想的ですよね

そうそう。私も、ハウスなどはかかる費用が高くなるから技術がついた後のほうがいいと思う。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

「さあ移住!さあ農業!」

▼私がなぜ移住をしてぶどう農家になったのか、以下の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。

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